
成長株投資を好む人が重視する指標としてROE(自己資本利益率)があります。
ただ、「成長期待のある高ROE銘柄を選定しているのにうまくいかない…」ということは良くあるので、そちらについて解説していきます。

ROEの使い方によっては大きな損失を出してしまう可能性があるよ!
ROEとは?
ROE(自己資本利益率)は、「純利益/自己資本」の式で求めることができ、自己資本に対してどれだけ効率良く利益を生み出しているのかを表しています。ROEが高いと効率の良い経営がされているといえるため、グロース投資(成長株投資)で重視されています。
海外の研究では収益性の高い会社ほどリターンが高く、収益性の低い会社ほどリターンが低い傾向があり、ROEも有効性のある指標とされています。
伊藤レポート(2014)では、日本企業は海外企業よりもROEが低い水準にあり、価値を創造するためには最低8%以上を目指すべきという提言がありました。そのため 、8%以上というのがひとつの基準となっています
高ROE投資がうまくいかない理由
①収益性ファクターが不調
そもそも日本株で2000年以降は、収益性のファクターがあまり機能しておらず、ROEを使った投資もうまくいっていなかった可能性が高いです。

売上総利益の高い企業のリターンを表している RMW(収益性)ファクターを確認してみましたが、 市場平均と変わらない成績でした。収益性単体だけでは超過利益を出すのが難しかったことが分かります。
日本株では、バリューの成績が良かったので、割安株に投資した人が利益を得ていたということですね。
②ROEの高さは平均回帰しやすい
高ROE銘柄は素晴らしい収益性も持っているがゆえに、その高さを維持できないという問題があります。
テストでいつも50点取っている人が成績を伸ばすのと、いつも80点取っている人が成績を伸ばすのとでは、後者の方が難しいことは容易に想像できます。高ROE企業はさらに収益を伸ばすことはもちろん、維持するのでさえも難しいと考えられます。

実際に日本株においても、市場平均よりもROEが高い場合は低くなり、ROEが低い場合には次第に高くなるという、平均回帰をしていることが分かります。
高ROE銘柄のROEが低下すると、期待が高かった分一気に株価が落ちることもあります。
③ROE単体では機能しない
そもそも、高ROE銘柄にだけに投資すると損をしやすいことが分かっています。
高ROEであるということは、多くの投資家から注目されやすいので、既に成長が織り込まれている可能性もあります。

上記のチャートを確認してみると、2000年~2018年にかけては、高ROEよりもむしろ低ROEの銘柄に投資をしていた方が、リターンが高かったといえます。
単にROEが高いというだけでは、「成長の平均回帰」、「既に成長が織り込まれて割高」等の理由により損失につながっていたと考えられます。
成績を改善するためのヒント
①収益性の指標を追加する
ROEが高いだけでは機能しないことが判明しましたが、他の収益性指標を追加することで、成績が改善する可能性があります。高ROE銘柄では単に借り入れが多く、レバレッジをかけた経営をしているだけの場合もあるので、ROA、営業利益率、経常利益率などの収益指標と総合的に判断すると良さそうです。
②ROEの改善傾向を確認する
ROEは平均回帰しやすい特徴があるので、実績ROEは高くても予想ROEが低いこともあります。実績ROEよりも予想ROEの方が高い、ROEが改善している銘柄を選んで投資をすると良いでしょう。

上記のグラフを確認しても、ROEの高さによってリターンが決まっているわけでは無く、どれだけROEが改善したかがリターンと関係しています。ROEの改善が期待できる銘柄へ投資することが重要です。
③割安な銘柄に投資する
いくら成長・収益性が高いといっても、すでに織り込み済の情報であれば、株価が上がることはありません。
そこで確認したいのが、成長・収益性に対して株価が割安かということです。PERやPBRが低ければ、まだ株価に成長性が織り込まれていない可能性も期待できます。(流動性が低い銘柄なら、さらに可能性が高いです)
成長株だから、高いPER、PBRでもOKという考えはやめて、割安もしくは適正価格であることを確認しましょう。
まとめ
高ROE銘柄への投資は、「収益性ファクターの不調」、「成長性の平均回帰」、 「成長性の織り込み」などが原因でパフォーマンスが悪かった可能性があります。
ROEを使う時には単一の指標ではなく、複数の指標で「収益性」、「割安性」なども考慮しながら、銘柄を選んでいくと良いでしょう。割安株の方が収益期待が高いのは当たり前の話ですが、成長性を重視して気にしない人を見かけることがあります。割安性、収益性にこだわって、他の投資家と差別化を図りましょう。
ちなみに、割安で成長・収益性が高い銘柄というのは、「素晴らしい企業を適正な価格で買う」というウォーレン・バフェットに近い投資方法でもあるので、実践してみるのも良いかと思います。
●参考文献
伊藤邦雄(2014)『 持続的成長への競争力とインセンティブ ~企業と投資家の望ましい関係構築~ (伊藤レポート)』
吉野貴晶(2017)『No.1アナリストがプロに教えている株の講義』東洋経済新報社
井出慎吾(2018)『株式投資 長期上昇の波に乗れ!』日本経済新聞出版社
コメント